【レビュー】医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン
今日は読書感想文。
ネット上でできる『認知特性』診断がTwitterで出回っていて、それがどーにも面白そうだったので、診断の載っていた本を電子書籍で買ってみました。
やっと読み終わりましたが、これがほんっっとにおもしろかった!!
いきなり自分語りで恐縮なんですが……。
私はコミュ障を拗らせていて、ちょーーーっと自分に自信のないタイプで。人間関係の失敗がトラウマで、自分を信じられず、誰かにキツく言われても言い返せないんですよね。
自分をダメ人間だと思い込んでいる部分があるので、悪意をぶつけられても、真っ先に「確かにそうかも」とか「私が悪い」とか思ってしまって。
もちろん、本当に私が悪いなら反省しなきゃいけません。でも、それが本当に私の反省すべきところなのか、相手から理不尽な怒りや思い込みをぶつけられているのか、区別が付かないんです。
そうして、できていない部分を自分の全てだと思って凹み、でも結局物事の区別がついていなので反省はできず、欠点を指摘されるのが嫌でやみくもに八方美人を演じて、疲れて、人間関係を避けるようになって、でも人と接しないわけにはいかいないのでまた人とのトラブルを抱えて凹んで……、の無限ループに陥る、相当なおバカなのですが。
この本の著者、本田真美という人は、小児科医として様々な子供とその親を見てきた経験から、個人個人の特性というものに着目しています。
だから、人の能力の偏りを理解していて、人間のさまざまな側面をすべてひっくるめて、「あの人は頭が良い優秀な人だ」、「あの人は要領が悪くて駄目な人間だ」と、一元化して判断することに否定的なんですよね。
そして、人の特性を6つのパターンに分けて解説しています。
それがこの本の目玉、『認知特性』。
認知特性
認知特性テスト
もともと認知特性とは神経心理学でよく使われる言葉で、人がものごとを認知するパターンを3つに大別したものだそうです。
①視覚優位者
→目で見た情報の処理が得意
②言語優位者
→読んだ言葉の処理が得意
③聴覚優位者
→聞いた情報の処理が得意
そして著者の本田さんは、自身の観察から、それを更に2つずつに分割。
①-1 カメラアイタイプ
→写真のように2次元の映像で思考するタイプ
①-2 三次元映像タイプ
→空間や時間の加わった3次元で考えるタイプ
②-1 言語映像タイプ
→文字や文章を映像化して考えるタイプ
②-2 言語抽象タイプ
→文字や文章を図式化して考えるタイプ
③-1 聴覚言語タイプ
→情報を『音』として情報処理するタイプ
③-2 聴覚&音タイプ
→音色や音階といった音楽的イメージを脳に入力するタイプ
これを診断するのが、最初に触れた『認知特性テスト』で、巻内にある質問リストに答えていけば、自分がどのタイプに当てはまるのかを知ることができるというものです。
『ホンダ35式認知テスト』で検索するとネット診断のページも出てきますが、私は何故かページがノートンに弾かれてしまって見れないので、電子書籍の画面をプリントアウトしてやってみました。
この診断と、診断結果が、すごく分かりやすく自分の長所と短所を教えてくれて、本当に面白いんです。
これが私の診断結果でした。線が汚い(´・_・`)
グレーゾーンが平均値らしいのですが、聴覚が全力で死んでいる代わりに、視覚・言語はちょっとだけ高水準。
確かに、私は映像と言語、……というより図や文字を結びつけて考えるのが得意かもしれません。リストとかが大好きで、特にこのテストを受けてからは積極的に活用しています。
聴覚の特性が総じて低いのも、すごーく納得。
先天的なものなのか、コミュ障を拗らせてきたせいか、人の話を音で聞くのはかなり苦手です。聞く→意味を理解する、のスピートが遅くて、特に多人数の会話の中にいると、私だけ話題に置いていかれることもしばしば……(_ _。)
ちなみに同じ内容でも、文章で読むと理解速度が爆上がりします。たぶんテレビはテロップがないと見れないタイプ。
ついでに夫にもやってみてもらいました。
個性の塊のような夫なんですが……、あれ、意外と偏ってない。
でも私と見比べてみても、これも「たしかに!」という感じ。
基本的には似たタイプなんですが、夫は私よりずっと耳がいいんです。そして、どちらかというと映像的に物事を考えるほうで、物事を図面に表す表現の力に関しては私の方が強そう。
……という感じで、自分の強み、弱みが一目瞭然でわかるんです。
特性を鍛えるためには
大人になってから、これらの能力を底上げするのは、とても難しいそうです。
それに比べて、子供はとても柔軟なので、就学前の子供には積極的にあらゆる感覚を使わせるべきなのだそう。様々な場所に連れ出して、色々なものを見せ、聴かせ、触らせて、匂わせて、全身を使わせる。
全ての力は体の感覚に繋がっているというのが本田さんの持論で、身体を全力で使うことこそが、大人になってからの能力に繋がっていくそうです。
子供ほどスムーズに特性を鍛えられない私たち大人は、苦手分野を克服するよりも、自分の特性を見極め、能力を生かせる環境を用意した方が建設的なのだとか。
私の場合は、聴力の弱い部分を、視覚と言語で補う形になるのかな。
人の話を音で聞こうとするのではなく、相手の話の趣旨を探して、言いたいことを要約し、纏め上げた図面で理解すると分かりやすいのかもしれません。授業でノートを取るようなものですね。
もちろん対面で会話しながらノートを取るわけにはいかないので(笑)、頭の中でやっていくことになるわけですが。
能力が発揮される順番とは何か
それからもうひとつ。
この本は基本的に、人の『能力』とは何かを主題にしていて、それを解説する手段の一つとして認知特性という概念を使っていたのですが、その人間の能力を深堀りするお話のうちの一つに、とても興味深いものがありまして。
リハビリテーション学に、「神経心理ピラミッド」というものがあるそうです。
前頭葉を損傷してしまった患者さんの認知を回復するため、脳のリハビリのために作られた図なのだそうですが、認知を回復させるということは、つまり能力を上げるということ。だからこのピラミット図は全ての人の能力に当てはまるだろうと考えて、著者なりの解釈で解説している章があります。
それがすごーく面白くて。更に私なりに要約して、図にしてみました。
下手くそでスミマセン……。
つまり、人間の能力というものは、ピラミット図にするとこうなっているんだろうという解釈です。
一番下に身体の感覚があって、その上に意欲や心的エネルギーという精神的なものが乗っかってくる。その体と心の問題をクリアしてはじめて、行動する力、その行動を維持する力が必要になる。そして結果を出すためには情報が必要になってきて(インプット)、集めた情報を上手く使う力も必要になる(アウトプット)。
元が脳を損傷した患者さん向けの図なので、一番頂上に、そうした自分を受け入れるという受容の項目があるんですが、これも万人に必要なものでしょうね。
何かつまづきを感じた時は、ピラミッドの上から順に辿っていって、原因を探ることになります。
例えば、時間内に仕事が終わらなかった時。
段取りを組み立てる力が弱かったからじゃないだろうか(インプットを整理し、組み立てて、実行する力が欠けている)。
↓
それ以前に、インプットが足りなかったんじゃないだろうか。
↓
いや、疲れていて集中力が欠けていたからじゃないだろうか。
↓
そもそも意欲が持てないことだったんじゃないだろうか。
↓
根源的に、身体が健康じゃなかったからなんじゃないか。
というふうに。
一口に能力といっても、それを発揮するまでにはこれほどの工程が隠れていて、最下層から順に積み上げていかなければ、結果は出ないんですね。
おわりに
上のピラミッドでは、逆に言うと、子供を育てる時は下から順を意識すべきなのかもしれません。身体の感覚を覚えさせ、その上に心をつくり、やがて、行動すること、集中すること、そうして結果を出すことを覚えさせていく。
著者は小児科医なので、子供の成長と絡めたお話がとても多く、私たち大人自身にとっても、小さな子供を持つ親にとっても、私のような今後子供と接していかなければいけない人間にとっても、すごく面白く為になる内容です。
もちろん、目玉である認知特性テストを受けて、自分の特性を知ることも楽しいんですが、何よりも、自分には特異不得意があって、得意な部分は伸ばし、不得意な部分はカバーすればいいんだという考えを与えてくれたことに、目の醒めるような心地がしました。
人には得手不得手があるなんて、当たり前のことなんですが、私はどうしても全てを一絡げにして自信をなくしてしまいがちです。
これはそんな私に、『自分というもの』、『能力というもの』を客観視し、考えるきっかけを与えてくれる本でした。
すごく面白かったです。オススメ!
長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さってありがとうございました。